小学生の時によく思っていたことがある。
「将来何になりたい?」「何の仕事をしたい?」と聞かれても困る。
そもそも子供の時は経験も知識も少ない。世界を知らないし、どんな職業があるのか知らない状況下で「何になりたい?」と夢をもつことを押し付けられても困るだけだ。
最早暴力にすら思えてくる。
あれはいったい何だったのだろうか。
ことに、身近な養育者から虐待を受けている子供時代の私にとっては苦行でしかなかった。将来の夢、などという授業は地獄そのものだった。
私の両親は毒親だ。
子供の感情、価値観を認めず、己の良しとしたことしか納得しない生き物だ。子供と意見が食い違えばヒステリックに怒鳴り、執拗に人格を否定し貶める。そうして日常的に子供の自尊心は粉々に破壊されていく。
毒親は、他人が他人であることを理解できない。
自分さえよければそれでいいのだ。
事あるごとに「お前は自己中、我が儘だ」と非難されたが、毒親お得意の特大ブーメラン芸だった。
学校から家に帰ると、暴力的な生き物がいる。子供だった私は周りに頼る大人がおらず(というより助けを求める発想がなかった)、家庭内暴力に耐えるしかなかった。毒親の機嫌を伺い、精神を擦り減らす。一挙手一投足、間違いは許されない。
しかしどんなにこちらが気をつけていても、毒親が気に入らなければ全て無駄になった。
- いつかこの人に殺されるのではないだろうか?
- 見捨てられるのではないだろうか?
恐怖で心が締め付けられた。いつも不安で、一人になると泣いてばかりいた。小学生の頃はよく虐めにも遭った。実の両親だけでなく同級生、上級生に繰り返し心を刺された。兄弟間も大して仲は良くなかった。私の日常は酷く殺伐としていた。
こんな状況で自分の将来、未来をどうやって描けるだろう? 無理だ。
暴力に耐えるだけで精一杯なのに、将来を考える暇なんてない。できないことを学校側から「課題、宿題」という名目で半強制的にさせられるのだ。やらなければ不真面目、反抗的な子供と教師に烙印を押される。
クソみたいな授業だなと思う。
どの家庭も健全、子供は健やかに育っている。
そんな幻想があるから「将来の夢」などという授業があるのだろう。
まず落ち着いて過ごせる環境があり、子供に選択肢があればそのうちやりたいことを自主的に見つけられると思うが、劣悪な環境にいる子供はそうもいかない。
私はここ数年で、自分が虐待サバイバーであることを自覚できたが、今学校に通っている虐待家庭の子供たちや大人になった虐待サバイバーに伝えたい。
将来の夢をもてなくて当たり前だ、と。
未来を想像できないのは、あなたがおかしいからじゃない。暴力に遭い、考える余力がないからだ、と。
そして読む訳ないと思うが念の為。
もし教育機関で働いている方がこの記事を目にしたならお願いです。子供に「将来の夢は?」と聞くのをやめてください。考えられない環境で必死に生きている子供もいます。
家庭内暴力から子供を保護するのは容易ではないです。せめて大人の無理解によって、「できないことをやれ」と子供に押し付けるのをやめてください。
どうか虐待家庭にいる子供の傷を増やさないようにお願いします。